
「羊毛とおはな」をご存知でしょうか。
この言葉からはふわふわとした感じと暖かさをイメージされることと思います。
そのイメージを裏切らない音楽性を持つアコースティックデュオのユニット名が「羊毛とおはな」といいます。
2004年に「羊毛」こと市川和則(Gt.)と「おはな」こと千葉はな(Vo.)によって結成された「羊毛とおはな」。
何となくシンプルに付けた名前のようですが、ふたりの音楽を象徴するものとなっているのが不思議です。
ちなみに「羊毛」という名前は、ふたりが出会った頃にインターネットのバンドメンバー募集サイトで市川が名乗っていたハンドルネームなのだそうです。
2007年のデビュー以来「オトナからコドモまで」楽しめるライブが全国で話題になり、CMやNHKの「みんなのうた」、映画やドラマの主題歌などに起用されることになります。
また、東日本大震災で被災者に多額の義援金を寄せてくれた台湾への感謝の意を込めたCMを制作して放映したところ、台湾国内で瞬く間に話題となり、そのCMで使用された楽曲を演奏する「羊毛とおはな」のアルバムが数々のチャートで上位を獲得。
2013年には台湾でのライブを行い、大成功をおさめます。
同年、結成10周年記念ライブを行い、やわらかでハートウォームなサウンドは音楽業界以外からも注目を集めるようになった矢先、2014年に千葉の療養を目的に「羊毛とおはな」は活動を休止。
千葉はなの言葉が生き続ける「羊毛とおはな」の活動
闘病する彼女を応援するために設けた「4月8日=ようはな=487=羊毛とおはなの日」でしたが、その日を選んだかのように2015年の「羊毛とおはなの日」に千葉はなは天国へ旅立ってしまいます。
運命的にも彼女の命日となったその日は生前彼女が言っていた「身体はなくなってもみんなの近くにいる」や「明るく楽しくやってね」の言葉通り、「羊毛とおはな」の音楽を楽しむ一日にしようと親しいアーティストをゲストに毎年イベントや動画配信などを開催するようになりました。
「羊毛とおはな」の音楽を広める活動を行い続けた結果、千葉はなが亡くなって5年が経った今でも映画やCMに楽曲が起用されるなど、人々の心に温かいメッセージを届け続けています。
結成20周年を迎えた「羊毛とおはな」から、知っているのに見たことのない素敵な花束。
そして現在。2024年は結成20周年を迎えました。
今年の4月8日、10回目の「羊毛とおはなの日」に結成20周年記念イヤー企画として過去のライブ映像を生配信し、その番組中にトリビュートアルバムのリリースを発表、5月15日リリース。
Vo千葉はな永眠後も、アーティスト活動を続けてきたギターリスト市川自らが企画し、千葉・市川両人の旧友から、近年市川がつながりを築いた若手アーティストまで多彩な面々による全11つのカバー曲を収録したトリビュートアルバムのタイトルは「まなざし」。
これは「羊毛とおはな」というデュオの過去と未来を音で見つめる参加したアーティスト全員の気持ちを意味すると同時に、このアルバムを聴いた人々の見つめる先も意味しています。
「トリビュートアルバム『まなざし』を誰に一番聴かせたいかと言ったら間違いなく千葉はなだ」と語る市川はこのアルバムを「はなむけのCD」と呼び、「千葉はなと一緒に創り上げてきた楽曲達が、尊敬している音楽家を媒介して『知っているのに見たことのない素敵な花束』が出来上がったような気持ちでいます」と話していました。
11組のアーティストたちから千葉はなへの「11のまなざし」

【収録曲】
- Salyu「ミグラトリー」
- アン・サリー「大きな木と小さな鳥」
- コトリンゴ「風に吹かれて」
- DadaD「揺れる」
- ワールドスタンダード「冬のうた」
- アイナ・ジ・エンド「輪」
- 安藤裕子「エピソード」
- 畠山美由紀「手のひら」
- Kitri「晴れのち晴れ」
- yui(FLOWER FLOWER)「はだかのピエロ」
- 大橋トリオ「ずっとずっとずっと」
個人的な感想を言いますと「羊毛とおはな」といえばオーガニック系の「アコースティックな音楽」というイメージを持っていたため、電子音を大胆に取り入れたトラックが8曲も収録されているのは意外でした。
しかしそれらは「羊毛とおはな」のアナログな世界観をデジタルに塗り替えようとしているのではなく、今まで使用してこなかった色彩を加えることでその世界を際立たせているような印象を受けました。
それとは真逆に、市川の「自由なアプローチでお願いします」とのオファーを逆手に取ったように、楽曲自体の魅力をストレートに引き出すべく、素直にピアノやギターだけのミニマムな編成でカバーされた楽曲も複数あり、楽曲という存在がそれぞれ形を変えながら生き続けていくということを鮮やかに体現しているアルバムなのだとも感じられました。
このアルバムをきっかけに「羊毛とおはなの日」のイベントに参加したり、「羊毛とおはな」の音楽、トリビュートしているアーティストたちの音楽に触れてみるのも良いと思います。
「羊毛とおはな」の音楽を聴いていると、ふっと気持ちが軽くなり、日々の喧騒から解放され、ふわっとあたたかい空気に包み込まれる気分が味わえます。
そんなあたたかい日差しの中でリラックスするべく、11組のアーティストたちによる「羊毛とおはな」の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
デイリーズレコーズについて

1999年9月、東京三鷹にて産声をあげた家具とインテリア雑貨のセレクトショップ「デイリーズ」は同年12月には同敷地内に「カフェ」をオープンさせました。
さらに「デイリーズ(=日常の集合体)カフェ」では「音楽も日常の一部」と考え、寛げる空間づくりの一環としてライブを開催。
「羊毛とおはな」も2009年から年に数回ライブイベントを行っておりました。
そんな中、もっと多くの方へ日常の音楽を届けたいという想いから2023年には音楽レーベル「デイリーズレコーズ」を立ち上げ、千葉はなが亡くなってからも市川のバンド「the BOCOS」がカフェ内にてライブを開催していた縁から、第一弾アーティストとして「羊毛とおはな」を起用。
トリビュートアルバム「まなざし」のリリース後には豪華アーティストも参加した発売記念ライブを「デイリーズカフェ」で成功させました。